中高年の腰痛

中高年に多く見られるのが『脊柱管狭窄症』です。 背筋を伸ばしたり、背中を反り返らせると痛みが現れます。


■中高年に多い腰痛

「脊柱管狭窄症」が50歳代から急増する

中高年の腰痛の原因として多いのが、脊柱管狭窄症です。 この病気は、40歳代後半から多くなり、50〜60歳代にかけて急増します。



●「脊柱管」が狭くなり神経を圧迫する

背骨は脊柱と呼ばれ、椎骨が縦に積み重なってできています。腰の部分にある5つの椎骨を「腰椎」といいます。 腰椎の背中側には、縦に細長く伸びる空間があります。ここを、「脊柱管」といいます。 脊柱管には、脳から繋がる神経の束(馬尾)と、椎骨と椎骨をつなぐ「靭帯」が通っています。 脊柱管狭窄症は、この脊柱管の周囲の骨が変形したり、靭帯が分厚くなったりして、空間が狭くなってしまう病気です。 脊柱管が狭くなると、馬尾や、そこから脚へと枝分かれした神経根が、圧迫されてしまいます。 その結果、腰の痛みだけでなく、足が痺れたり、動かしにくくなるなどの症状が現れます。 先天的に脊柱管が狭かったり正常より狭いまま発育するなどの要因もありますが、原因のほとんどは後天的なものです。 最も大きな要因は、加齢によって腰椎が変形したり、靭帯の柔軟性が失われて、分厚くなることです。 また椎間板ヘルニアが原因となることもあります。脊柱管の狭窄は、背骨のどの部分でも起こる可能性はありますが、 痛みなどの問題が起きやすいのは、腰椎です。


■症状

少し歩くと痛む「間欠性跛行」が現れる

前かがみになると痛みが強まる椎間板ヘルニアと異なり、脊柱管狭窄症では、歩いたり、立ったりして、背筋が伸びた状態や、 反り返った状態になると、痛みが強まります。背筋を伸ばしたり反り返ったりすると、前方から椎間板が、後方からは靭帯が、 脊柱管の内側に向かって隆起してきます。そのため、神経がより強く圧迫されてしまうのです。 背筋を伸ばしたり反らしたりすると、痛みや痺れが強くなるほか、「間欠性跛行」という症状が見られるのも、 脊柱管狭窄症の大きな特徴です。間欠性跛行とは、少し歩くと痛みなどのために歩けなくなり、少し休むと、 また、歩けるようになる状態です。 脊柱管狭窄症の場合、歩くと脊柱が伸びて、神経が圧迫されて痛みや痺れが強くなって、歩けなくなります。 少し休んで前かがみになると、神経の圧迫が緩んで、症状が軽くなります。

●別の病気が隠れていることもある

間欠性跛行は、脚の血管が狭くなり、血流が悪くなる、「末梢動脈疾患」でも起こります。 この場合は、姿勢には関係なく少し休むと、また歩けるようになります。 脊柱管狭窄症以外の腰痛で、間欠性跛行がある場合は、注意が必要です。 いずれにしても、症状があるときは、すぐに受診することが大切です。



■保存療法

症状が出てから3〜6ヵ月は保存療法を行ってみる

痛みに対しては、「非ステロイド性抗炎症鎮痛薬」や、神経の痛みを和らげる「抗鬱薬」「抗てんかん薬」 を用います。間欠性跛行は神経への血流をよくすると改善するため、「プロスタグランジン製剤」などの、 循環障害改善薬を用います。それでも痛みが改善しない場合、「神経ブロック」の注射を行います。 その他、腰を温める「温熱療法」や、 「コルセット」で腰を保護するなどの、 治療を行うこともあります。急性の強い痛みがなければ、運動療法を行って、腹筋や背筋を鍛えます。

●日常生活でも腰をいたわる

寝るときは硬めのマットレスを使用し、背筋を必要以上に伸ばしてしまううつぶせ寝をしないようにします。 横向きで膝を軽く曲げて寝たり、膝の下に座布団を敷くと、腰への負担が軽くなります。 高い場所に物を持ち上げたり下ろしたりするときは、背伸びをしなくて済むよう、踏み台を使いましょう。 また、かかとの高い靴を履くと、姿勢が反ってしまうので、安定性の高い靴を選びます。




■手術療法

脊柱管の空間を取り戻す「椎弓切除術」が行われる

痛みや痺れのために、日常生活に支障が出るときや、「尿が出ない」といった排尿障害がある場合には、手術療法を検討します。 手術法はいくつかありますが、よく行われているのは、神経を圧迫している骨や靭帯を取り除く、 「椎弓切除術」です。 入院期間は1週間から10日前後です。重労働やスポーツは2〜3ヶ月ほど避けますが、日常生活にはすぐ戻れます。 特に間欠性跛行の改善効果がく、患者さんの生活の質が向上します。 ただ、すでに神経が傷ついている場合は、腰痛や痺れが残ることがあります。