脊柱管狭窄症に『新ブロック注射』

腰部脊柱管狭窄症は、高齢化とともに増えている病気で、現在、国内の患者数は500万人に達する勢いとされています。 そんな脊柱管狭窄症の治療に、抗サイトカイン薬を使うブロック注射が有効であることがわかってきています。 ブロック注射とは、痛みのある場所、もしくはその周辺に針を刺し、薬剤を注入する治療法。 厳密には、神経や神経周囲に注射する神経ブロック注射、椎間関節などの関節内に注射する関節内注射などさまざまな方法があります。 ブロック注射を打つと、神経の興奮などが抑えられ、痛みや痺れが和らぎます。 また、ブロック注射の効果は一時的ですが、その間の痛みが遮断されているため、ブロック注射の効果が切れても その後の痛みを感じにくくなるというメリットもあります。


■効果の持続時間も長かった

某大学でも、脊柱管狭窄症の患者さんにブロック注射を行っていますが、その手法は通常のものとは少し違います。 一番の違いは、用いる薬剤です。通常、ブロック注射は、痛みを遮断する麻酔薬や炎症を抑えるステロイド薬を使います。 ところがその大学では抗サイトカイン薬をブロック注射に用いているのです。 抗サイトカイン薬というのは、サイトカインという炎症性の痛みを引き起こすたんぱく質を抑制する薬。 もともとリウマチの治療薬として利用されていて、腰痛治療には用いられてきませんでした。 そんな中、その研究グループは抗サイトカイン薬によるブロック注射とそれまで用いてきた ステロイド薬によるブロック注射の効果を比較するることにしたのです。

試験では、脊柱管狭窄症などで重い症状がある腰痛の患者さん60人を、抗サイトカイン薬によるブロック注射を行うグループ30人と、 ステロイド薬によるブロック注射を行うグループ30人に分けて、症状の改善度を比較したのです。 比較する前、つまり開始段階の痛みの平均レベルは10段階のうち8を示していました。 点数が高いほど痛みが強いことを示すため、8というのは痛みがかなり強い部類になります。
そうして、開始から4週間後の痛みのレベルを比較したところ、抗サイトカイン薬を用いたグループでは平均4、 ステロイド薬を用いたグループでは平均6で、治療後に手術になった患者さんは前者では3人のみ、後者では6人もいたのです。 なお効果の持続時間も違っていて、抗サイトカイン薬を用いたグループでは4週間続き、ステロイド薬を用いたグループでは、 1、2週間しか効果が続かなかったのです。実は、効果が4週間続くというのは脊柱管狭窄症の改善に大きくつながります。 というのも、脊柱管狭窄症の場合、狭まった脊柱管が広がることはありませんが、約3分の1の患者さんは3〜4ヶ月で 自然に神経や血管の炎症が治まり、痛み・痺れなどの症状が静まります。 その苦しい、3、4ヶ月の間、抗サイトカイン薬によるブロック注射なら通常のブロック注射に比べて通院が少なくて済み、 痛みも僅かであるため、自然回復に向かう可能性が著しく高まるのです。


●治療時間は約10分ですぐに帰宅できる

それでは、脊柱管狭窄症の患者さんに行う、抗サイトカイン薬によるブロック注射の手順も少々述べておきましょう。 まずベッドに横向きに寝てもらった患者さんの腰に局所麻酔薬を打ちます。 そして、レントゲンを使った映像を見ながら、特に坐骨神経痛がひどい患者さんには神経根に、腰痛だけの患者さんには 椎間板に抗サイトカイン薬によるブロック注射を行います。ちなみに、細切れにしか歩けなくなる間欠性跛行しかない患者さんは、 ブロック注射の適応外です。ブロック注射にかかる時間は約10分。その後、速やかに帰宅することができます。 局所麻酔をしているために、治療後2、3時間は痛み・痺れが完全になくなっていますが、その後はすこし症状が出ます。 とはいえ、抗サイトカイン薬のおかげで、痛みなどはそれまでの半分以下でしょう。 脊柱管狭窄症への抗サイトカイン薬によるブロック注射は健康保険が適用されるので、1回にかかる費用は2000〜4000円程度で 済みます。