腰部脊柱管狭窄症に『X-POP』

腰部脊柱管狭窄症の治療において、基本は保存療法になります。保存療法とは手術以外の治療法のことで、 薬物療法・理学療法・運動療法・神経ブロック(神経の周囲に局所麻酔を注射する治療法)など、 さまざまな種類があります。これらの保存療法を組み合わせて、治療方針が決められていきます。 こうした保存療法を組み合わせた治療を3〜6ヵ月続ければ、患者さんの7割前後は脊柱管狭窄症の痛みや痺れがよくなってきます。 その期間を過ぎても痛みや痺れが軽快しない場合、手術が検討されます。 ただし、足腰に強い麻痺が出ていたり(膝をまっすぐに伸ばせない、足先を下に向けて蹴れないなど)、膀胱・直腸の異常で 排尿・排便障害があったり、間欠性跛行で20mも歩けなかったりしている場合は、保存療法の経過とは関係なく、 早急な手術が勧めれます。というのも、こうした人たちは神経の痛みが進んでいる恐れがあり仮に手術を受けても回復が困難な場合があるからです。 つまり、脊柱管狭窄症の人は、痛みや痺れ、あるいは間欠性跛行が深刻になる前に手術を検討すべきなのです。


■還納式椎弓形成術

還納式椎弓形成術が患者さんから好評

腰部脊柱管狭窄症の手術の一番の目的は、狭くなった脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く「除圧」です。 現在、除圧のための手術法が数多く登場していて、病医院・医師によってどの手術が行われるかは違ってきます。 その中の一つに『還納式椎弓形成術』があります。 これは、背骨を構成する椎骨の背中側の椎弓をいったん切り離して取り出し、その内側(脊柱管側)を削って脊柱管を 十分に広げてから、再び元の位置に戻すという手術療法。一般的には、椎弓を戻して固定するときに金属製の 瓶を用いていましたが、還納式椎弓形成術出は骨専用の接着剤を用いています。

還納式椎弓形成術の手順を簡単に述べておきましょう。
まず、全身麻酔をした患者さんの背中を5〜7cm切開し、腰椎についている筋肉を温存したまま椎弓の最後部(棘突起)を縦に割って、 椎弓を切り開きます。それから、椎弓の一部を三角形に切り離して取り出し、神経を圧迫していた椎弓の内側や黄色靭帯を 削り取ります。削り終えたら、椎弓を元の位置に戻し、骨専用の接着剤で固定します。接着剤はすぐに固まるので、 しっかり固定されたことと、神経の圧迫が取り除かれたことをよく確認してから、筋肉と皮膚を縫合して終了です 接着剤で固定した骨は、半年ほどで自然に癒合します。

この還納式椎弓形成術では神経の除圧が安全かつ十分に行え、しかも椎弓や椎間板関節など重要な部分も最大限に残せるので、 再発や後遺症も極めて少なくすみ、患者さんからも好評を博しています。 ちなみに、手術時間は人によって異なり、およそ1〜2時間程度必要に異なります。 手術の翌日か、翌々日には患者さん自身で歩けるようになり、一週間でほぼ退院できます。 手術費用は、狭窄部の数や状態によって変わってきますが、健康保険が適用されます。


■X-STOPが全国的に普及してきた

さて、最近になって従来の手術法に比べて、患者さんの負担が軽く、新しい低侵襲手術も開発されています。 中でも、全国的に普及してきた術式が『X-STOP』です(専門的には脊椎制動術、 もしくは低侵襲性脊椎制動術という)。X-STOPとは、腰椎の棘突起にインプラントという小さな医療用の器具(正式には、 これがX-STOP)を挿入し、それを入れたままにすることで、脊柱管の狭窄を改善する方法です。 棘突起にインプラントを挿入すると、その部分の腰椎の動きが制御され、脊柱管が狭まるのを防げるのです。

X-STOPの手順を述べましょう。まず、患者さんにうつ伏せか横向きに寝てもらい、局所麻酔をします。 人によっては、全身麻酔の場合もあります。 次に、腰の部位をメスで4〜5cmほど切開し、その部分からインプラントを棘突起間に挿入し、留め金で固定します。 なお、背骨の状態は人それぞれで違うので、術中にトライアル用ののインプラントを用いて実際に挿入するインプラントの 大きさを決めます。そうして、レントゲンで患部を撮影。インプラントが正しい部位にあることを確認し、 傷口を生体用ノリで塞ぎます(基本的に抜糸は不要)。手術に要する時間は、30分〜1時間で済みます。

●適応は脊柱管狭窄症の軽症例

X-STOPでは、手術中の出血はわずかで、骨を削ることも神経に直接触れることもありません。 そのため、手術による合併症が起こる心配がほとんどなく、患者さんは早期に痛みから解放されます。 しかも、手術は基本的に局所麻酔なので、麻酔から覚めればすぐに歩行や食事ができるし、 手術の当日にシャワーを浴びることも可能です。
こうしたことから、X-STOPを受けた後自宅に帰ることもできますが、通常は傷口を管理するため、2、3日の入院が勧められます。 そして、術後1週間経った頃、傷口の確認のために来院してもらい、あとは月1回の経過観察です。 X-STOPは、欧米では10年ほど前から盛んに行われていて、日本では2011年に健康保険が適用されるようになっています。 手術の費用は20万円程度で、患者さんの負担は6〜7万円。他にベッド代・食事代・検査代などがかかります。

X-STOPは患者さんに負担がかかりにくい手術で、年々、これを取り入れる病医院が増えています。 とはいえ、実際にはX-STOPが適応となるのは、立ったり歩いたりするときのみ足腰に痛みや痺れが現れる人。 つまり、脊柱管狭窄症が軽症の人です。数か所で狭窄が起こっている人、高度の脊椎変形や滑りを伴う人、狭窄がひどい人、 脊椎分離症の人などは適応になりません。